
仏教には「口業(くごう)」という言葉があります。口、つまり言葉によって成す善悪の行いのことです。私たちは、感謝も不満も同じ口から発します。それは心を込めて語ることもあれば、つい口をついて出てしまうこともあるでしょう。
私が大学生の頃、魚屋さんでアルバイトをしていました。その魚屋さんは、魚を売るだけでなく、調理してお届けもする店でした。ですから、注文の電話が毎日のようにかかってきます。そんなある日、大将が電話を取りました。
「はい、○○です。今日はですね〜、アジとスズキが良いですよ。はい、わかりました。いつもありがとうございます」
そう言って感謝の言葉を述べ、電話を切りましたが、次の瞬間、「この人はいつも声が小さいから聞きづらい」と不満をこぼしたのです。この大将が特別なのではありません。誰しもが、同じ口で感謝も不満も語るのです。そして、その同じ口で、お念仏を称えることもできます。南無阿弥陀仏「どうか私を極楽へ導いてください阿弥陀様」という救いを求める言葉です。お念仏を申せば、どんな人でも極楽へ導いてくださいます。たとえ私たちが悪い口業をしてしまったとしても、それを咎めることはありません。
できることなら、この口からは良い言葉だけを発したいものです。しかし、時には不満もこぼしてしまうのが私たちの口です。そんな口でも、尊いお念仏を称えることができます。その有難さに感謝しつつ、今日もお念仏をお称えいたしましょう。
合掌