前・現・後  2015年12月01日

 言葉・匂い・風景などによって、忘れていた記憶が一瞬で甦るというこはないでしょうか。その時の情景がはっきり思い出される。私はそんな事が時折あります。

 昨日・今日・明日とあるように、我々の生涯も、前世・現世・後世があります。我々は、この生涯を初めてと思って過ごしていますが、この現世は、生まれ変わりを繰り返す中の1つの生涯なのです。
 我々は生まれ変わるたびに、前世の事を忘れてしまうのです。前世でも今と変わらず、愛する家族や大切な仲間に囲まれていたはずです。思い出せない限り、離れ離れになった寂しさも悲しさもないわけですから、何の支障もないのかもしれません。ですが、このままでは、今の大切な方々も、後世では忘れてしまうことになるのです。我々は幾度もの生涯で、どれほどの大切な方々を忘れてしまっているのでしょう。そして、その生涯はいつまでも繰り返すことになってしまうのです。
 阿弥陀さまのお力で極楽に生まれますと、幾度もの生涯に終止符をうち、極楽に生まれた者は、すべての記憶を甦らせる力を得ることができるのです。愛する家族や大切な仲間の記憶を忘れることなく、極楽でまた会えるのです。

 前世の記憶を忘れてしまっている我々ですが、現世の記憶も忘れてしまわないように、お念仏をお称えしましょう。記憶を失わずに済む方法は、南無阿弥陀仏とお称えする他ないのだという事を、忘れてはなりません。